韋駄天さまはもともとインドの神でスカンダというお名前です。
インドには三千以上の神々がいるといわれていますが、日本にもたくさんの神さまが紹介されています。神々の王をインドラということは知らなくても、帝釈天という名前でならよく知られています。象頭の聖天さんや弁財天さま、毘沙門天さまや韋駄天さまも、もとはインドの神さまなのです。

韋駄天さまは、直接的には火神の子です。しかし火神の中に入り込んだインドの最高神シヴァによって生まれたことからシヴァの子とされております。その誕生の秘密から六面十二臂の子供の姿をしているのですが、それは間接的に母が六人いるためで、かなりややこしい話なのでここでは割愛いたします。

もともと阿修羅という悪魔たちを倒すべく求められて生まれた神さまなので、強力でありほぼ無敵です。
かつて神々と阿修羅との間に繰り返し激しい戦争がありました。神々の王である帝釈天率いる神族は力の限り戦いましたが、どうしても悪魔たちを打ち負かすことができません。それどころか、悪魔のほうが優勢で、神々や全ての生き物はとても苦しんだのです。
「どこかに強い将軍がいないものか」
帝釈天は考えましたが、神々の王である自分より強い神がいるはずもなく苦悩するばかりです。あるきっかけで彼は悪魔にさらわれようとしている乙女を助け、その時に無敵の将軍、優れた司令官を得るだろうということを知ります。

韋駄天さまが生まれた時、その姿は子供のままでしたが、恐るべき力を備えておりました。
それを知った神々の軍勢は自分たちを守ろうと韋駄天さまに襲い掛かりますが、逆にたった一人の韋駄天さまに打ち負かされてしまいます。しかし己を知る韋駄天さまは「あなたこそ神々の王にふさわしい、どうかインドラの位についてください」という神々の懇願を拒み、逆に神々の王に仕えることを望みました。喜んだ帝釈天は、韋駄天さまを神々の将軍、第七軍団の司令官に任命したのです。

それから間もなく、悪魔たちが一気に襲い掛かってきました、突然のことに、神々は全滅しそうになってしまいます。その時、宇宙の果てから一瞬にして駆けつけ、逆に悪魔たちを全滅させたのがこの韋駄天なのです。

神々が悪魔との戦いで滅びかけた時、宇宙の果てより駆けつけたった一日で悪魔の群れを滅ぼしたこと、またお釈迦さまの入滅の際、仏舎利を盗んだ捷疾鬼を追い瞬く間にこれをとらえたこと。これらのことからから、危機に際して一瞬にして駆けつけて救ってくれる俊足の神、盗難除けの神として知られております。

火神の子であるので、特に鎮火の守護神として厨房に祀られており、伽藍を守る護法神ともされております。

そしてもう一つ。
それは韋駄天さまから病魔が生まれたということです。ただし、それは悪魔的な意味ではありません。
古代インドの神話によれば、韋駄天さまの体から金色に輝く男子が生まれ、それが病魔となり十六歳までの子供を苦しめます。しかしこの病魔は、十六歳までは災いをもたらしますが、それ以降は幸せをもたらすものなのだそうです。子供の病気はそれを乗り越えれば強くたくましくなるということであり、一度は苦しむ麻疹、水痘、風疹、おたふくかぜなどですが、それを乗り越えてすくすく育つよう子供を成長させてくれる神さまでもあるのです。

この病魔を鎮めるために沐浴や焼香などをし、スカンダに対する祭祀を行うべきであると、このように書かれております。
つまり清潔で規則正しい生活のことですね。
古代インドでは、韋駄天さまへの祭祀によって長寿と幸福が授かると信じられておりました。今でも毎月五日は韋駄天諷経をおあげする日です。

 

ところで。

五日といえば、端午の節句ですね。
いささか気の早い話ではありますが、五月人形を飾ってみました。
昔から温度・湿度の変化のあるこの季節は、病人も亡くなる人も多く悪い月とされたそうです。端午の節句は、邪気を払い魔除けをする行事でもあります。

同じ五日のご縁ということであり、
なによりも病魔が蔓延する事態でもあり、病魔退散・平癒回復のいのり、願いをこめて韋駄天さまのもとに飾ることにいたしました。

わざわざ手をあわせにきてくださいとは言えませんが、お寺にいらっしゃる機会がございましたら、どうぞ祈りのこころをもって手をあわせていただければさいわいです。