大人のしわざ
本堂にコウモリが住み着いて久しいのですが、なんとなく放置いたしておりました。境内地の樹木の伐採といった彼らの住宅事情の変化は、まさに住職によるものでありますし、いまさら追い出すのもという店子へのためらい、本堂内の虫を食べてくれるという理由などなど、いろいろそれなりにあったわけです。
しかしながら、毎朝、本堂内のいたるところにフンをしますし、なによりコウモリという生き物自体が雑菌やウイルスを持っている可能性が高いことから、本堂の屋根裏の隙間や穴を網で塞いでいただきました。
そのおかげで、コウモリのフン害は激減し、副次的に他の鳥たちの侵入も防ぐという効果をももたらしました。例年のように、ヒナたちが落ちてきて本堂を走り回るといったこともなくなったわけです。
従いまして、今年の春は平和でありました。ヒナとの出会いがなくなったことへの寂しさはあるものの、やはり親鳥のもとを離れることなく健やかに育つのが一番です。そんなふうに思っておりましたある日、本堂から義母の叫び声が‥‥今年もやっぱり落ちてきたんだなぁと保護しに向かいましたら、おりました。ただし親鳥が。飛ぶ。ぶつかる。暴れる。飛ぶ。もうヒナの比ではありません。高所に逃げましたので、サッシまで誘導してなんとか外に出すことに成功。その時留守だった寺族さんに話しましたら笑っておりました。夕方でしたので寺族さんが本堂に手をあわせに向かいましたら、今度は寺族さんの叫び声が。行ってみると、いました。あれ?またあなたですか?窓に何度も突っ込んでいくので、今度は網にて捕獲。大人なんだから、もうちょっと注意してねとその場はおしまい。その数日後、今度は花瓶に入ってしまい出てこられなくなったのは別のおはなし。
今年は寺族さんがネモフィラを育てて綺麗に咲かせてくれたのですが、どうしても一か所、咲かないどころか真ん中に妙なへこみのできている場所があります。どうしてその場所だけと不思議に思っておりましたが、先日、ようやく原因が判明。というより犯人がわかりました。現行犯でしたので間違いないでしょう。ちなみに、彼だけでなく、わたくしと寺族さんで勝手に「シェリー」と呼んでいるノラ猫一家も一味であることが判明しております。シェリー一家の別の猫がネズミを捕らえようとしている現場にでくわし寺族さんと見守っていたのですが、あまりにも下手であったので印象に残っておりました。
夜に、来客を見送りに外にでましたら、ひっくり返っているなにかが!
すわ、G(ゴキブリ)ではあるまいな?まさか踏んではおるまいな?などと慌てたものの、よくよく見ればGではなさそうです。恐る恐るマスクにのせてみましたら、なんとお久しぶりのクワガタムシでした。地面にひっくり返っていたくらいですから元気はあまりない。近くにありましたサツキの花にそっと乗せました。さいわい、顎をクワッとするくらいには元気を取り戻したようでしたので、そのままおやすみなさい。
皆さん大人ですのに。いえ、大人だってなにかしらありますよね、それは。
身近にいる命です。虫は苦手ですし、鳥や猫には怖がられて嫌われたかもしれませんが、それでも一緒にいれば何かと楽しいのです。相手もそうだといいのですが無理でしょう。せめて、死後に「大王様!こいつです、こいつ!こいつが僕を捕まえたんです!」などと訴えないでくれればいいなくらいは思っていますが。