焼香とは「五種供養」のひとつ、仏さまにお供えする供物、香・華・灯・食・浄水の五つのうちの一つ、香をお供えすることを言います。
沈香・白檀などの香木を焚き、よい香りをお供えいたします。仏さまがおあがりになりますのは私どものような飯食ではなく香りだからであり、これを「香食」と申します。ですから、仏さまにはよい香りのものをお上げいたします。
逆に、よろしくない香りはおあげいたしません。お膳でお供えするものにも、三厭(動物の肉)や五葷(または五辛。葱、辣韭、大蒜、玉葱、韮など)といった生臭いものや臭いの強いものを避けます。
よい香りによって仏さまが供養に応じてくださいます。

また、香の芳しい香りによってその場を浄め、私どもの心身をもきよらかにするのだともいわれております。このように、香のきよらかさに感じて応じてくださることから、迎仏ということも申します。

さて、一般的な焼香の仕方でありますが、香炉の前にお進みになりましたら一礼し、まずは合掌をいたします。

一礼されますと、手は自然に前に出て下がります。これを組んだり重ねたりするのは不自然ですので、手は自然に腿に沿って下げます。下腹のあたりで手を重ねたり組んだりするのは、いわゆる「休め」の姿勢ですので、仏前では「休め」をせずに一礼なさってください。

合掌

香炉の前におすすみになられましたら合掌をいたします。
お焼香の際には、肘を張り過ぎず、手首が肩の高さくらいになるように自然に手を合わせます。身体の横から手を合わせるのではなく、身体の前で静かに手を合わせましょう。(横から手を合わせるとシンバルを叩くお猿さんの玩具のような不自然な動きになります)

お焼香

お焼香は右手でおこないます。右手の親指、人差し指、中指の三本の指で香を一つまみし、両手で額まであげて押し頂き、香を捧げてから焚きます(これを拈香といいます)。この時、手のひらは返さずに手の甲を上にしたまま拈じます。
一度、香を焚きましたら、もう一度、香を焚きます。二度目の時は額まで頂く必要はありません。これを従香といいますが、大きな香木を焚くのと違い、細かく小さな香は薫香も少ないのでもう一度焚くのです。

つまり、焼香の回数は二度となります。その都度、手に取った香を焚いてください。香を手に取ったまま何度も額に向け、いったりきたりさせてから香を焚いている方もおられますが、手に取った香は一度ごとに焚いてください。拈香が一度、従香が一度であわせて二度です。
回数につきましては、たとえば真言宗では三度、小笠原流では二度あるいは三度というふうに伝えられておられます。ここで二度と記しましたのは、曹洞宗での焼香の仕方ということであります。従いまして、曹洞宗の檀徒さんでしたら曹洞宗の焼香の仕方でしていただければよろしいのですし、あるいは特定の宗派があるのでしたらその宗派の仕方に従われるのがよろしいでしょうし、あるいは小笠原流の作法を学ばれました方でしたら小笠原流の仕方でなされるのがよろしいかと存じます。

なお、お焼香の際に「写真を何秒間かみつめてから」ということをいわれる方もおられるようですが、なにに依ってなのか、どのような典拠があるのか不明です。最近つくられた「マナー」なるもののようですが、そうしなければ間違いというようなものではないはずですので、無理にそうなさらなくてもよいでしょう。

腹の前で手を重ね、肘を張って礼をする形は、古来からの日本の礼法にはありません。間違いといってよいでしょう。必要も合理性もないものです。間違いである上に、ただみっともないだけのものです。
着物の前身頃、衽の上あたりで手を重ねるのならまだしも、腹の上で手を組むとなると全く意味不明です。着物を着たことがないか着物の着方を知らない人が考えたものでしょう。スカート丈が短くて下着が見えそうなときに、スカートの裾部分に手をかけるというのならわかりますが、ウエストベルトに手をかけるとなると合理的な理由などどこにも見当たらないというようなものです。

お焼香は仏さまによいものをおあげしたいという尊崇の念によっておこなわれるのですから、きちんとした正装で、きちんとした作法の下でおこないたいものです。