十三佛掛け軸

龍泉寺には十三仏の掛け軸があり、大広間の床の間に掛けてありますのでいつでも皆さんの目に触れることができます。もっとも、この掛け軸にはちょっとした事情があり、なかなか案内しがたい思いがあるのも事実です。

掛け軸の裏にはその由来についての裏書があり、記録によれば

 維時安政四龍次巳仲秋吉旦
  二十七葉 祖田代調(焉?)
羽州平鹿郡朝舞邨長雲山龍泉禅寺什具
   六日町
   高橋三左衛門
   覚町
 為 高橋三右衛門   各家門繁栄子孫長久
   新平川             寄附
   菅原勘之丞
   新平川
   佐々木長兵衛

と記載されているとあります。全て合致しているかは不明ですが、大凡のところ間違いはなさそうです。というのも、修復の際、裏書はざっくりと切りとられてしまい、もはや全文の復元は不可能であるからです。
先住31世智雄大和尚が修理に出された際に裏書を記録しておいたことで、記録のすべてが失われることなく残っていたことは幸いでした。

しかしながら、まったく許せないのは、裏書が切り取られて失われたこととは別に、この掛け軸が印刷物であるという事実です。

寺院仏閣には文化財が多くあり、その道の専門の方が出入りすることもあるなかで、いつでもだれの目にも触れることができたからこそ判明したわけです。つまり修理からかえってきたものは、安政年間に描かれたものではなく印刷された真っ赤な偽物。このような檀家各家の願いのこもった什物を偽物に替えてくるとは言語道断であり、まったく許せない行為であります。先住も常々なにかおかしいと口にして気にはしていたようですが、いつのまにか時だけが過ぎてしまいました。

さいわい、修理の際に業者との間に入って口をきいてくださった方がいらしたようですし、そもそも、どの業者なのかはその年の領収書の綴りを調べてすぐに判明する程度の事実なわけですから、記録が残っている以上はなにも問題はありません。
今後どのように対処していくのか。事実発覚から数年、じっくりと取り組んでいこうかなと考えておるところです。

お寺の財産だからというだけではなく、そもそも歴史的な遺物・文化財は、世界にとって人類にとっての宝でありますから、わたくしには、これらが傷つけられたり破損されたりということ自体、耐えがたいことに感じられるのです。たとえ外国の、宗教宗派が違うものであっても情けないおもいにとらわれてしまいます。善意があればいいよというものでもなかろうと思ってしまう。できないことなのであれば手をだすべきではないし、信用を意図的に裏切るのならそれを商売とはいわないでしょう。

現在は信用できる業者さんへ委託しておりますので上記のような憂いはないのですが、それにしても過去に戻れるものなら戻りたい、掛け軸が失われる前にさっさと取り返してしまいたいものです。

お知らせ

前の記事

雪下ろし作業中です
ブログ

次の記事

節分行持・立春諷経