桃の節句と端午の節句そして二宮尊徳

今年も、旧暦にあわせて、桃の節句・端午の節句に人形を飾り、お祭りをいたしました。

昨年よりさらに人形やひな御殿なども増え、ひな人形をもう一組飾ろうかな、その場合には本堂の室中か脇間の一角にでもどうだろうか、などと迷っているうちにあっという間に五月人形と交代する時期になってしまいました。
五月人形を増やすことはできませんでした。かねてより念願の二宮金次郎像を入手したことで、今年はもう満足してしまいました。

二宮金次郎という方はどこからみても素晴らしい人物です。学校といわずお寺といわず、すべての日本人が顕彰すべき徳を備えた方であり、その純粋な思想は禅に通ずるところも多いのです。

もっとも、二宮金次郎には、一見、禅を批判しているかのような「手もあしも衣につつみあなに居て坐禅する間にはしる世の中」という歌もありますし、一般的には、その人物像は質素倹約と刻苦勉励、勤労のイメージだけが張り付いたものとなってしまい、誤解というよりは歪められているといってよいくらいというのが現状です。

が、実際には先の歌の真意はまさに「だからこそすぐに立ち上がって皆と一緒に行いにいこう」ということであり「衆生を先に度して自らは終に仏に成らず」という自未得度先度他のこころにほかならないものでありましょうし、その行いは功利有用を追求したものではなく、慈悲仁愛のまごころからのものであることがその生涯の言動・事績から知ることができるのです。

わたくしはそのような人物と、そのような人物たりうる真心をもつことを尊重したいし形にしたい。だから二宮金次郎像を切望していました。今年、五月人形のあとにこれを飾ることができたことを大変うれしく思います。